先日、またCSで「さらば友よ」を放映していたので見ちゃいました。HDDに保存してあるっていうのに…。
細かいストーリーとか解説はネットに溢れているのでそちらを参考にしてください。
ただ、どの映画評とかブログを見ても、2人の男同士の友情みたいなのを讃えているけれど、それ、ちょっと違う感じがします。
この2人には金庫に閉じ込められたことで危機を脱出するための共同作業はあったけれど、曲者の2人にとってそれは刹那的な交流であり、友情と呼べるようなウェットな関係ではありません。
2人がしたことは、自分たちがすべきことを頑なに守ったこと。
男同士の約束の重さ、といった方が分かりやすいでしょうか?
カフェでワインを飲みながら「Adieu L'ami」と言ったのは、お互いがこれからすべきことを分かっていて、それを言わなくても信頼できる相手、つまり上でも下でもなく、対等として認めたから『友』という言葉を使ったのでしょう。
ハードボイルドですよね。
男同士、細かいことをいちいち説明しなくても歯車が上手く噛み合って物事が自分たちの思惑通りに運んだら嬉しくなるものです。
それが「eyaaaaaaaaaaay!」のセリフの意味ではないでしょうか?
ところで、フランス語の「さよなら」はAu voirとかÀ bientôtなんかが一般的ですが、この映画のタイトルにはAdieuが使われています。
Adieuは2度と逢うことがない相手、死んでしまった人に言う「さよなら」だそうです。
それを考えると、タイトルもいいですね。
Adieuにぴったりな日本語が「さらば」であることに違和感を覚える人もいるでしょう。ちなみにアメリカ公開時にはFarewellが使われていました。
確かに口語で「さらば」は使いませんが、文語にした時、個人的には好きです。
だからチャンドラー作「Farewell My Lover」は清水俊二さん訳の「さらば愛しき女よ」の方が好きで、村上春樹さんの「さよなら、愛しい人」は馴染めません。半分読んで飽きちゃいました。
村上ワールドの初期作品は大好きだったんですけれどね。
だからってチャンドラーに持ち込んで欲しいわけじゃない。
脱線しましたが、甘ったるい友情とかの映画で胸焼けした時は「さらば友よ」がおすすめです。
夏の日を思い出させるキリッと冷えたドライ・ジンを飲んだような気分にさせてくれます。