地図にない道〜続き・その1〜
- TaddyBear
- 2019年4月23日
- 読了時間: 2分

「地図にない道」に登場した2人です。
手前がドライバー、奥がガイドです。今回はドライバーの話。
この人、私が取材中、とにかく笑いませんでした。ガイドと2人で話していても笑顔を見せません。「七人の侍」の久蔵よりも笑いません。英語を喋らないので近寄りがたい存在でした。
そのガイドが1回だけ、ニヤッとしたのが食事の時。
現地で取材する時はできるだけ現地人と同じ食事や習慣を取るようにしているのですが、統制が厳しいところでは外国人専用のレストランに連れていかれることがよくあります。
当時のオマーンでも都市部では私1人だけ別のところで食事をしていました。
しかし地方へ行くと外国人専用レストランがなく、一緒に食事をしなければなりません。私用にナイフとフォークを用意してくれましたが、マナーに従って右手で食べたら、それを見て口の端を曲げました。眼を見たら温かかったので、多分、笑ったんだと思います。
取材ではオマーン伝統の壺制作のところにも行きました。
職人の作業風景を撮影しようとしたら、いきなりドライバーがガイドに大きな声を上げ、ちょっと緊張した雰囲気になりました。ガイドが言うには「彼はアラブ人ではない。(出稼ぎの)インド人だから撮影するならアラブ人にしろ」とのこと。
日本人が見たらどっちだって一緒だからこっちは構わなかったんだけれど、きっと日本の伝統工芸を海外に紹介する時、アジアの他の国の職人だったら嫌だなと思う頑固な日本人がいるかもしれない、と思ったらドライバーの心情が理解できました。
それでも、心に突き刺さるのはいつだって差別を受ける無抵抗な人達の目線。
この時も、眼を伏せる前に浮かんだのは私を見た時の絶望的な寂寥感。
ドライバーが悪いわけではないけれど、その寂寥感をもたらせたものは何か、と考えると気分がずっしり重くなりました。
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